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RAG (Retrieval-Augmented Generation) システム構築のすべて

LLMのハルシネーションを防ぎ、社内ナレッジを回答させる。ベクトルデータベースを活用したRAGシステムの仕組みと実装。

佐藤 裕介

佐藤 裕介

フルスタックエンジニアとして15年以上の経験を持ち、スタートアップから大企業まで幅広いプロジェクトに携わってきました。

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RAG (Retrieval-Augmented Generation) システム構築のすべて

はじめに

大規模言語モデル(LLM)は驚異的な文章生成能力を持ちますが、いくつかの弱点も抱えています。学習データに含まれない最新の情報や、社内文書のようなプライベートな知識については回答できず、時にはもっともらしい嘘の情報を生成(ハルシネーション)してしまうこともあります。この問題を解決する最も強力な手法が「RAG (Retrieval-Augmented Generation)」です。

RAGとは?

RAGは、LLMが回答を生成する際に、外部の知識ソース(ナレッジベース)から関連情報を**検索(Retrieval)し、その情報を根拠(コンテキスト)として回答を生成(Generation)**する仕組みです。これにより、LLMはあたかも最新の情報や社内文書を「読んだ」上で回答しているかのように振る舞うことができます。

RAGシステムの主要コンポーネント

RAGシステムは、大きく分けて「インデックス作成」と「検索・生成」の2つのフェーズで構成されます。

1. インデックス作成 (Indexing)

  • データローディング: PDF、Markdown、Webサイトなど、様々な形式のドキュメントを読み込みます。
  • チャンキング: 読み込んだドキュメントを、LLMが処理しやすい適切なサイズのかたまり(チャンク)に分割します。
  • エンベディング: 各チャンクを、意味的な類似性を計算できる数値のベクトル(埋め込みベクトル)に変換します。これにはOpenAIのtext-embedding-ada-002などのエンベディングモデルを使用します。
  • データ格納: 生成されたベクトルと元のテキストチャンクを、ベクトルデータベースに格納します。
    • ベクトルデータベース例: Pinecone, Chroma, Weaviate

2. 検索・生成 (Retrieval & Generation)

  1. ユーザークエリのエンベディング: ユーザーからの質問(クエリ)も、インデックス作成時と同じエンベディングモデルを使ってベクトルに変換します。
  2. 類似度検索: ユーザーのクエリベクトルと、ベクトルデータベースに格納されているチャンクのベクトルとの間で類似度計算(通常はコサイン類似度)を行い、最も関連性の高いチャンクをいくつか取得します。
  3. プロンプトの拡張: 取得した関連チャンクを、元のユーザークエリと一緒にLLMへのプロンプトに埋め込みます。「以下のコンテキスト情報を参考にして、質問に答えてください。」といった形で指示を与えます。
  4. 回答生成: 拡張されたプロンプトを受け取ったLLMが、提供されたコンテキストに基づいて、正確で根拠のある回答を生成します。

RAGの実装を助けるライブラリ

LangChainやLlamaIndexといったライブラリは、上記のようなRAGの複雑なパイプラインを、数行のコードで実装するための便利な抽象化機能を提供します。

まとめ

RAGは、LLMの能力を最大限に引き出し、ビジネスの現場で安全かつ効果的に活用するための鍵となる技術です。ファインチューニングに比べて導入が比較的容易でありながら、高い効果が期待できます。まずは手持ちのドキュメントを使って、LangChainなどのライブラリで簡単なRAGシステムを構築してみることから始めてみてはいかがでしょうか。

著者について

佐藤 裕介

佐藤 裕介

フルスタックエンジニアとして15年以上の経験を持ち、スタートアップから大企業まで幅広いプロジェクトに携わってきました。

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